情報開示がもたらす利益(2026年)
環境アクションがもたらすビジネス価値の実証

情報開示がもたらす利益に関する年次報告は2回目を迎え、市場の大きな変動が続く中で発表されました。サプライチェーンの混乱や貿易摩擦の激化が、世界各地のビジネスと国家に強い経済的なプレッシャーをかけています。
例えば、イランにおける戦争は、アルミニウムから肥料まで、コモディティティの価格に極端な変動を引き起こしています。
その一方で、環境リスクが経済の混乱におよぼす影響もますます顕著になっています。極端な気象イベント、資源の制約、不安定な生態系などが事業の継続を困難し、既に運営が成り立たない状況になっている事例もあります。
最近のCDPの調査によると、2025年には、約4.000社の企業が総額30億米ドルの異常気象による経済損失を報告しています。そして長期的には、異常気象がその数百倍の経済的影響をもたらすことを企業は予想しています。これらの問題は単独で扱うことはできず、すべてのビジネスの経営と世界経済の健全性に関する重要な要素として、全体的な視点で対処しなければなりません。

ビジネスリーダーは、そのような課題に対処する方法を模索しています。本年の「情報開示がもたらす利益」では、業種の異なる世界各地の国や地域の企業が、どのように、環境課題への対策を講じることからビジネス価値を引き出しているかを強調しています。
省エネから廃棄物削減に至るまで、多数の排出量削減イニシアチブで価値を生み出し、多くの場合、数年以内に費用対効果が得られています。
ビジネスはまた、環境リスクに今対処することによって明らかな利益を得ており、損失回避、コスト削減、業務の効率化などを通じて、1米ドルの投資に対して平均8米ドルのリターンが見積もられています。
リスクと機会の双方における発見のプロセスが、現在の情勢においてレジリエンスを構築し競争優位性を獲得するリーダー企業を後押しします。
情報開示がもたらす利益とは?
情報開示がもたらす利益とは、組織が環境データを開示し、それらに基づいて行動することにより得られるベネフィットを指します。
環境情報開示への投資は、企業が異常気象への対応力を高めるだけでなく、ネットゼロ経済への移行に伴う新たな機会を捉え、自社の事業や業界に関する戦略的な意思決定を支える基盤となります。
情報開示は、資本へのアクセス拡大や投資家からの信頼向上、事業レジリエンスの強化をもたらすだけでなく、変化を続ける環境関連の規制や開示枠組みへの備えにもつながります。知見やインサイト、標準化されたデータは、変化の激しい事業環境において、組織のレジリエンス向上と持続的な成長を支えます。
メソドロジー
本レポートのインサイトは、2025年にCDPを通じて情報を開示した、11,260を超える大企業および中堅企業から得られたデータを使用しています。これは、世界の時価総額の約3分の2に相当します。
主な調査結果
本レポートの要点:
環境リスクに対処するコスト1米ドルごとに中央値で最大8米ドルのリターンが得られています。
排出量削減に1米ドル投資するごとに、平均2.4米ドルのリターンが生まれ、そのプロジェクトライフタイムを通じてリターンが7米ドルに達することもあります。
CDPを通じて情報開示を行う企業は、非開示企業と比べて移行リスクに伴うコストの影響を受けにくいことが示れています。この優位性は、2050年までに企業価値(EV)ベースで1兆米ドルに相当すると試算されています。
既に財務的な損失を織り込み始めています。企業は、環境リスクによる累計損失額が2030年までに1.24兆米ドルに達する可能性が高いと予測しています
インサイト
昨年の情報開示データ分析では、企業が気候変動の物理的リスクへの対応に投資した1ドル当たり、最大21ドルのリターンを生み出していることが明らかになりました。
すべてのセクターにおける中央値は8米ドルでした。
本年、リターンの中央値は10米ドルで、金融サービスに属する企業は、1米ドルに対して平均64米ドルにのぼるリターンを得ています。これは、事業活動全体で金融機関が直面しているリスクが高いことを反映しています。実体経済の企業では、自社事業活動やバリューチェーンを対象にリスク評価を行うのに対し、金融機関は融資・投資ポートフォリオ全体にわたる幅広いリスクにさらされています。それに加えて、これらのリスクの緩和コストは比較的低く、大きなインパクトを与えます。
本年のレポートでは、物理的なリスクのインパクトを評価する指標を拡張し、気候変動、フォレスト、水セキュリティを横断する物理的なリスクと移行リスクの双方に対処する場合のインパクトを評価しました。
この包括的な手法により、現在組織が直面しているすべての環境リスクの緩和に投資することにより得られる利益が明らかになります。
「木を見て森を見ず」
すべてのリスクが同じとは限りません。企業は、自社がさらされている独自の環境の脅威について評価する必要があります。その取り組みは既に進んでおり、CDPの分析によると、重大な環境リスクを特定している企業の割合[2]は、2018年の46%から2025年の80%に増加しています。
CDPを通じて気候関連リスクを報告している企業の数は、過去7年間で増加しています。2018年には、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が企業報告に関する提言を公表しました。この年には、53%の企業がCDPを通じて気候関連リスクを報告しています。それと比べると、その値は2025年には79%に増加しています。
気候変動の移行リスクが物理的リスクを上回るものの、企業は徐々に物理的なリスクへの脆弱性を認識しています。報告された移行リスクと物理的リスクの全体的な比率は、2018年にはほぼ2対1でしたが、2025年には1.7対1に減少しています。
リスクの定義
環境リスクを特定および評価するために企業がとるプロセスは、過去7年間で成熟度を増しています。
2025年には、88%の企業が環境リスク評価のプロセスがあると報告[3]しており、それに対して2018年には59%でした。また2025年にプロセスがあると報告した企業のうち、64%が直接操業とバリューチェーンの両方を評価しています。
2018年のデータによると、報告された気候関連リスクの大部分は自社事業活動で発生しており、その割合は73%に達します。一方、サプライチェーンで発生するリスクが15%、バリューチェーン下流で発生するリスクが12%を占めています。しかし、多くの企業はバリューチェーン上のリスクも把握しており、自社事業活動以外のリスクを特定していない企業は、わずか16%にとどまっています。
大多数の企業は、環境リスクを特定するだけでなく、その影響を財務パフォーマンスと明確に結び付けています。大企業および中堅企業の71%は、これらのリスクによる重要な影響を受ける財務指標を開示しており、その影響がもはや抽象的なものではなく、すでに財務的な観点から理解・評価されていることを示しています。
売上高は最も影響を受ける財務指標であり、47%の企業がその影響を受ける指標として挙げています。これは、環境リスクが企業の業績に直接かつ即座に影響を及ぼし得ることを示しています。こうしたリスクに適切に対応しなければ、収益源の毀損につながる可能性があります。
以下の内訳は、物理的リスクと移行リスクの双方が、すでに企業の財務見通しに反映されていることを示しています。これらのリスクは、将来のレジリエンスだけでなく、現在の価値創造にも影響を及ぼしています。[4]
「時間軸の悲劇」
CDPを通じて情報を開示する組織は、環境への依存、インパクト、リスク、機会に関連して対象となる短期、中期、長期の時間軸の設定について質問されます。回答するにあたり、企業は自社の資本またはインフラの耐用年数、直面している環境リスクの詳細、事業を展開しているセクターおよび地域を考慮することが推奨されます。
報告された時間軸を分析した結果、企業は今、リスク評価を実施する際に、より先の未来を見ていることが分かります。長期的な時間軸の範囲の最大値ベースで、中央値が2018年の15年から2025年の25年に延びており、これは、ビジネスが、資産がリスクにさらされている度合いを完全に把握し、2050年ネットゼロに向けた想定シナリオに自社の計画を適合させようとしていることを示唆しています。
2025年には、リスクにさらされている企業の半数以上が、潜在的な財務的影響を少なくとも1つの対象となる時間軸で推定しています。短期的なリスクについて推定値を報告した企業の数は、長期的なリスクと比べて4倍でした。これは、長期的なリスクを数量化することはより困難で、財務的影響が大幅に少なく見積もられる確率が高いことを示しています。
報告されたデータによると、環境リスクへの対応を怠った場合、2030年までに累計1.24兆米ドル、2040年までに累計1.77兆米ドルの損失が発生する可能性が高いことが示されています。2030年までの損失額の約3分の1は、物理的リスクに起因すると予測されており、これはひとつには極端な気象イベントによるインパクトの増大を反映しています。報告年のみで、企業は306億米ドルのリスクが現実化したことを報告しています。
CDPを通じて情報を開示する企業は気候リスクの影響を受けにくい? – ICE気候調査ノート

CDPを通じて情報を開示する企業では、その将来価値に伴う移行関連気候リスクが、同業他社より約3割低くなっています。
気候関連情報の開示は、長年にわたり幅広いベネフィットをもたらしてきました。しかし、その根拠となる資料の多くは、過去の排出量、過去の目標、過去の行動など、過去を振り返るものでした。そこで、「CDPの情報開示組織は、気候の移行により受ける可能性のある、予想炭素価格、規制強化、高排出量製品の需要低下に起因する財務的な損失が同業他社より少ないか」という、未来志向で具体的な問いを立てました。
その答えを出すために、CDP2025情報開示データと、企業の将来価値がどの程度移行コストの影響を受けているかを推定する、ICEの気候バリューアットリスク(CVaR)モデルによる推定値を組み合わせました。使用したデータセットは7,818社の上場企業を網羅し、その3,302社がCDPを通じて情報を開示した企業、4,516社が開示していない比較対象となる同業他社でした。
調査結果
気候関連の財務リスクの予想に影響する、企業規模、セクター、地域を含むその他の要因を考慮しても、CDPの情報開示組織は、同業他社に有意な差をつけて優位に立ちました。[4]2050年までは、世界全体でネットゼロに向かう中で、CDPの情報開示組織では予想移行リスクが他社より約35%低くなっています。これは、他社平均の約5.6%に対し、企業価値でほぼ2ポイントの低下です。これにより情報開示は、企業規模をほぼ8倍上回る、ICEのモデルにおける最大の単一説明要因になります。絶対的には、対象となる期間が長くなるほどCDPを通じた情報開示の優位性の差が広がることが予想されています。つまり、2030年までは0.7ポイント、2040年までは1.7ポイント、より強力な環境政策が発効する2050年までの期間では2.0ポイントです。
2ポイントの差はそれほど大きくないように見えますが、米ドルの絶対値で見ると、影響の重大性がわかります。分析対象となった3,302社の情報開示企業の企業価値総額は85兆米ドルにのぼります。2%の差は、情報開示企業全体でリスクにさらされる企業価値が、情報開示を行っていない同業他社と比較して1兆米ドル以上少ないことを意味します。
CDPを通じて情報を開示している組織は、すべての時間軸で移行リスクを低減
本当に情報開示の効果なのか?
そもそもCDPを通じて情報を開示している組織が他社と違い、もともと排出原単位が低く、気候変動へのレジリエンスが高いのではという懸念を抱くのは当然です。ここでは、情報開示そのものではなく、相違点について説明します。この点については、3つの方法で検証を行いました。まず、CDP開示企業それぞれについて、企業規模、業種、地域、排出原単位が同程度の非開示企業を個別に選定して比較しました。その結果、両者の差は1%未満しか縮まりませんでした。次に、データから極端な外れ値を除外して分析しましたが、その差に変化は見られませんでした。最後に、排出量を推計値で補完した企業を含めて分析対象を拡大したところ、差はわずかに縮小したものの、依然として約1.8ポイント残りました。
なぜ重要なのか
情報開示は、これまでもベストプラクティスとしてその重要性が語られてきました。しかし今回の分析結果は、情報開示が単なる慣行にとどまらず、企業にとって重要な意味を持つ可能性を示しています。実際に、CDPを通じて情報開示を行う企業は、移行リスクが低いことが確認されました。
重要な注意点は、これは相関関係にあることです。CDP開示企業のリスクが低い背景には、企業そのものの特性がある可能性もあります。例えば、優れたガバナンスや強固な経営体制、信頼性の高い気候変動戦略を備えた企業は、積極的に情報開示を行うと同時に、リスクへのエクスポージャーも低くなる傾向があるのかもしれません。それでも、実務的な示唆は変わりません。CDPに報告を行う企業は、気候移行に向けた備えがより進んでいることが示されています。
詳しくは、climaterisk@ice.comまでお問い合わせください。
[5]メソドロジーに関する注記:信頼できるスコープ1および2の排出量(開示品質カテゴリー1~3)を直接開示した企業に限定し、ICE推定企業を除外した7,818社(CDPの情報開示組織3,302社、CDPを通じて情報を開示していない組織4,516社)を対象範囲としました。情報開示の効果は、シナリオベースで推定され、CTVaRのCDP指標、対数企業価値、セクターおよび地域の固定効果に対する共変数を調整した最小二乗法(OLS)による回帰分析を使い、企業規模、セクター、地域といったその他の要因を一定としたギャップとしてCDP係数を抽出しました。
選択バイアスを排除するため、傾向スコアマッチングにより結果を確認しています。これは情報開示の効果が存続するグループにほぼ同等な比較可能な標本を作成して行います。CDPを通じて情報を開示する組織は、組織的に規模が大きく、競争の激しいセクターに属しているため、回帰分析を使って統制した上でのギャップであっても、情報開示という行為そのものではなくどのような企業が開示するかを反映している可能性があります。情報開示の傾向を logit P(CDP) ~ log(EV) + log(排出原単位) + セクター + 地域とモデル化し、次に、CDPを通じて情報を開示した3,302社すべてを、CDPを通じて情報を開示していない同業他社(6,604社)に1対1で対応させる傾向スコアマッチング(最近傍マッチング、非復元抽出)を行いました。その結果、バランスは大きく改善しました。標準化平均差は0.50から0.13に下がり、log -EVの規模に残っていた不均衡が0.18から0.08になったことで、企業規模、セクター、地域、排出原単位において、2つの群は、ほぼ同等で比較可能になりました。
排出量削減の財務的な利益
8,000を超える大企業および中堅企業が、報告年内に有効であった排出量削減イニシアチブがあったとCDPを通じて報告しています。
開示データ全体で、最も多く報告されたイニシアチブの3つのカテゴリーは、低炭素エネルギーの消費、建物のエネルギー効率、製造プロセスのエネルギー効率でした。
下図は、すべての排出量スコープにわたる炭素削減量の中央値を示しています。イニシアチブごとの年間平均削減量は、二酸化炭素換算で275トンとなっています。
ケーススタディ:Diageo(ディアジオ):サプライチェーン効率化による価値創出
アルコール飲料のグローバルリーダーであるディアジオは、長年CDPを通じて環境情報を開示し、サステナビリティへの強固な取り組みを確立しています。
同社は、自社事業活動(スコープ1および2)においてネットゼロを2040年までに達成する目標を掲げており、それとは別に、スコープ3排出量を2030年までに26%削減する目標を掲げています。
バリューチェーンにおける排出量削減に取り組むために同社が主に焦点を当てているのは、加工原料、包装、サプライヤーが購入するエネルギーです。
ディアジオは、二酸化炭素換算で年間予想90,000トンを削減する60以上の排出量削減イニシアチブを、最近実施したか開始しています。
例えば、次のようなイニシアチブがあります:
同社の主力銘柄のスコッチウィスキーおよびビールのガラス瓶商品において、ガラスの量を約3,400トン減らし、排出量を削減する
商品の包装をなくすことで(900万個の紙箱など)、包装資材を591トン減量。
バイオエネルギー施設への投資とその利用を増やし、天然ガスへの依存を減らす
ディアジオはまた、サプライヤーに対して明確な環境条件を設定しており、排出量データを追跡・共有し、同社の森林減少に関する方針に準拠し、使用電力を100%再生可能エネルギー由来とする取り組みを要求しています。サプライヤーの進捗については、四半期ごとにスコアカードによるモニタリングを実施しています。
投資利益率
排出量削減イニシアチブの多くは、大きなコスト節減をもたらしています。
コスト削減の総額は、276億米ドルから407億米ドルまで広範にわたりました。
まず、6,791の組織からなる最初のサンプルから、年間削減額につながる年間排出削減量に関する情報を得ました。このサンプルでは、約407億米ドルの年間削減額が報告されています。
次に、データ品質に関するより正確で慎重なフィルターを使用して、サンプルを6,569の組織と21,241個のイニシアチブに絞り込みました。その結果、削減額は総額で約276億米ドルとなりました。
さらに、4,400社を超える企業による12,387個のイニシアチブのサブセット[6]を評価したところ、排出量削減イニシアチブの過半数(69%)が利益(生涯コストの純削減額)を生み出し、41%が3年以内に投資を回収していることがわかりました。
同じサブセットによると、典型的な排出量削減イニシアチブは約142%の生涯ROI(割引なし)を生み、投資回収まで中央値で3年でした。言い換えれば、排出量削減イニシアチブに1米ドル投資するごとに、平均2.4米ドルのリターンが生まれ、そのプロジェクトライフタイムを通じてリターンが7米ドルに達することもあります。
CDPの情報開示組織ではそれほど広まっていませんが、廃棄物削減と原材料の循環性(マテリアルサーキュラリティ)は、財務的に最も魅力的なイニシアチブとなっており、1米ドル投資するごとに3.9米ドルのリターンが生まれ、投資回収まで中央値でわずか1.3年でした。その最も多く報告されたプロジェクトの種類として、廃棄物削減、リサイクル、リユースが挙げられています[7]。
それに続く製造プロセスのエネルギー効率は、1米ドル投資するごとに3.6米ドルのリターンが生まれ、投資回収まで中央値で2.1年となっています。この結果は、エネルギー効率が数百億米ドルのコスト削減につながり、平均的な投資回収期間が2年以内であったというIEAの調査とも合致しています。その最も多く報告されたプロジェクトの種類は、機械の変更・設備の更新、プロセスの最適化、圧縮空気と廃熱の回収が挙げられています。
事例*
製鋼における廃棄物の発生抑制
スペイン、Acerinox(アセリノックス)
アセノックスの主な温室効果ガス排出源は、製鋼工程における加工原料と合金鉄の使用です。
同社の製鉄所では、製造工程、特に製鋼工場と熱間圧延プロセスにおいてスクラップを使用する割合を増やすために、さまざまなイニシアチブを実施してきました。
スクラップ選別の改善、コストの削減、新しいスクラップ管理フォーマットやバックホーローダーの検討に焦点を当てたプロジェクトが進行中です。また、金属回収能力を強化するために機械を改造または取得する取り組みが進められています。
エネルギー効率の改善と低炭素エネルギーの生成
中国、Baosteel(宝鋼)
同社の宝山サイトでは、主に廃熱回収に焦点を当てた、合計39個の省エネプロジェクトが実施されています。例えば、中温廃熱資源を回収、再利用するための大型の煙管式廃熱ボイラーと付属設備が、焼結工場に新設されました。その結果、年間49,100トンの石炭に相当するエネルギーの節約が実現しました。
インド、ReNew Energy Global(ReNewエネルギー)
燃料の使用と排出量の削減に加えて、コスト節減を図るために、プロジェクト実施サイトにおいてディーゼル発電機が太陽光発電システムに変更されました。その結果、二酸化炭素換算で推定1,548トンの排出、および532キロリットルのディーゼル燃料の使用が回避されました。
*注:これらの事例は2025年の公開CDPデータから直接抽出し、理解を助けるための軽微な編集を加えています。
ケーススタディ:Telefónica(テレフォニカ):Telefónica(テレフォニカ)、エネルギーコスト削減のために再生可能エネルギーに目を向ける

国際的に事業を展開する通信事業者であるテレフォニカは、2003年からCDPを通じて情報を開示しています。
同社の情報開示の取り組みにおいて、テレフォニカは、エネルギーを事業に対するリスクと機会の双方として特定しました。リスクは、電力価格およびカーボンプライシングの上昇による操業コストの増加にあり、機会は、再生可能電力に重点を置くことによる、送電網から購入するエネルギーコストの減少と競争力の強化にあります。
テレフォニカの再生可能エネルギー計画は、同社の気候変動対策の計画および脱炭素化へのロードマップの一部として、自社の直接操業全体にわたる気候関連の緩和目標および適応目標の両方を支えています。
同社は、自社の事業全体に適用される再生可能エネルギー計画を開発し、以下の領域に焦点を当てています。
自家発電。電力の配電網への依存を減らすために、太陽光、風力、バイオエタノール発電システムに投資しています。
発電源証明付きの再生可能電力証書の購入。この証書は、発電地点から消費地点までの再生可能電力のトレーサビリティを保証するもので、現時点で、スペイン、ドイツ、ブラジルなどの国において、消費電力の100%を再生可能エネルギーでまかなっています。
長期的な電力売買契約。再生可能電力の価格が固定されているか予測可能なため、市場の変動による影響が軽減されます。
この計画は既に、大きなコスト節減と排出量削減をもたらしています。2025年には、スコープ2排出量は、基準年(2015年)を98%下回っています。また、テレフォニカの2025年の自社施設における再生可能電力の消費は、総電力消費量の93%に達しました。同社は、その主力事業において、2030年までに消費電力の100%を再生可能エネルギーでまかなうことを目指しています。
再生可能エネルギーへの注力は、同社の適応モデルの一部であり、ビジネスにおけるレジリエンスの向上および極端な気象イベントによる経済的な影響の軽減を目的としています。
テレフォニカはまた、太陽光による自家発電を増やすことで、水力発電に影響を及ぼす長期にわたる干ばつなどの物理的な気候リスクにさらされる電力供給源への依存を減らしています。
再生可能電力の調達への組み込み、自家発電、レジリエンス計画は、テレフォニカの事業継続性を強化するとともに、低炭素経済における長期的な競争力を支えます。
マーケットフォーカス
ケーススタディ:ANTA Sports(アンタスポーツ):サプライチェーンの透明性向上を通じて投資家の信頼を強化
スポーツ用品のリーダー企業である中国のアンタスポーツは、排出量の削減を推進し、ビジネスの長期的なレジリエンスを強化しています。
同社は、堅牢で信頼性の高い、検証可能な環境データシステムを持ち、開示データを測定可能な成果に変換しています。2024年には、同社はスコープ1排出量を11.1%削減し、排出原単位が21.7%減少しました。
アンタスポーツは、気候関連課題に関して自社の大規模なネットワークへのエンゲージメントを行っており、サプライヤーは、CDPを通じた排出量データの開示、低炭素慣行の促進、サステナビリティパフォーマンスの管理プロセスへの関連付けを求められています。
2026年5月時点で、このビジネス価値が以下の成果につながっています。
1,000を超えるサプライヤーが、脱炭素化イニシアチブに参加しています。
130のサプライヤーが、ソーラーパネルなどの再生可能エネルギーシステムを設置しています。
270のサプライヤーが、再生可能電力に適応したか、関連するグリーン電力証書を購入しています。
さらに、同社は第三者保証を導入し、中国のスポーツウェア業界において、スコープ1、2および3の排出量全体にわたって検証された最初の企業となりました。
このアプローチにより、次のようなビジネス上のメリットがありました。
透明性が高く、高品質な開示データにより、投資家の信頼感が向上
物理的リスクと移行リスクの特定により、リスク管理を強化
サプライヤーエンゲージメントにより、バリューチェーンにおける脱炭素化が加速
ハンセンESG50指数、ダウ・ジョーンズ・ベストインクラス(Dow Jones Best-in-Class Emerging MarketsIndex)などの主要なESG指数への組み入れなど、市場における認知度が向上
アンタスポーツの実績は、環境情報の開示を通じて事業価値を創出しようとしている企業にとって、再現性のある経路を提供しています。
課題を乗り越える
本レポートでは、ビジネスが、現在の環境条件がもたらすリスクと機会をどう重視しているかについて、詳細な分析をお届けしています。
環境に関する情報開示とアクションのビジネス価値は、その性質上、多岐におよびます。水不足の影響を受ける企業は、インターナルウォータープライシングの設定に関する情報を活用し、エネルギーコストが高い企業は、新たな省エネイニシアチブに投資する判断を下すでしょう。
しかし、すべての企業において、自社の環境への依存、リスク、インパクト、機会に関してより高度な理解を得ていることがわかります。そして、これは実績によって裏付けられています。2017年のTCFD提言などの新しい環境情報開示枠組みの導入が、これらのリスクへのより優れた適応と理解につながっています。
情報開示は、この道のりにおいて重要なサポート役を担います。ICEの関連調査が、この仮説を支持しています。CDPを通じて環境情報を開示する組織は、現在および2050年までの両方において、気候変動に関する移行リスクの影響をかなり受けにくいことが示されたのです。
先進的な企業は、地球環境の健全性と経済的な意思決定が密接に関連していることを認識しています。そして、その意思決定を支える重要な資源として環境データを活用しています。本レポートでご紹介した企業は、環境リーダーシップは環境対策であると同時に経済戦略でもあることを認識しています。、そしてアースポジティブな経済に投資する企業ほど、成長し、競争を高め、持続的な発展を実現する上で有利な立場にあることを示しています。
脚注
1.この便益費用比率は、企業各社の自己申告による、環境リスク(物理的リスクと移行リスク)の潜在的な財務的影響の推定額に基いています。同一セクターでも企業各社で数値が大きく異なります。得られる利益としては、コスト削減、損失回避、業務の効率化などがあります。
リスクの緩和による便益費用比率は、すべての時間軸にわたる潜在的な財政影響の総額を、リスクに対応するためのコストで除すことによって算定されています。この比率は、リスク対応の実施に関連した潜在的な利益を、そのコストに対して推定するものです。この利益には、損失回避、コスト削減、業務の効率化、その他の定量化できる効果(特定された場合)が含まれます。この計算では、提示された緩和策が十分に効果的で、影響評価における残存リスクや不確実性が含まれていないことを前提としています。また、リスク発生の確率やタイミングが反映されていない可能性があります。
2.少なくとも1つの環境課題に関連するリスク。
3.少なくとも1つの環境課題を扱うリスク評価プロセス。
4.データ品質フィルターの条件を満たす開示データに基づいています。
5.この資料には、Intercontinental Exchange, Inc.および/またはその関連会社(以下、「ICEグループ」といいます)の所有物である情報が含まれており、ICEグループの明示的な書面による同意なしに公開、複製、コピー、改変、開示、または使用してはなりません。
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6.収益性を評価するために必要な財務データを提供した企業からのデータに基づき、作成されました。
7.廃棄物削減の例としては、リサイクル可能な包装の割合を増やす、事業全体にわたる体系的な廃棄物削減戦略の実行が挙げられます。
リサイクルの例としては、農業活動に伴う廃棄物の堆肥化、製鋼工程におけるスクラップ利用の拡大が挙げられます。
リユースの例としては、使い捨てボックスから再利用可能な配送用ボックスへの転換、建築廃材の埋め戻し材としての利用が挙げられます。